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それからというもの、高雄にとって面白くないことが立て続けにおこった。

いいことをあげるとするなら一つ。

許婚がいるからという理由で家にこもり、花嫁修業と呼ばれる類のことばかりしていた妹がよく外に出るようになったことだ。
お陰で最近は顔色も明るくなっている。
以前が病的だったわけではないがやはり日の光を浴びるのと浴びないのとでは断然違う。

……問題は、その外に出るようになった原因だ。

唐杉黒羽。

この名前を聞くだけで高雄はむかむかしてくる。
しかもその名前が食卓でよく出てくるようになったとなれば不機嫌にならざるをえない。
悪い噂ならばまだしも可愛い妹が楽しそうに唐杉のことを話すのだ。
佳代は佳代で比叡が家事以外のことにも興味を持つようになった、と楽しそうに唐杉の話を聞く。
ああ、おもしろくない!と高雄は読み終わった生徒のレポートを乱暴に置いた。
時計を見あげれば今は3時を少し回ったころ。
後数分もすれば比叡が此処へやってくるだろう。

唐杉の部屋へ行ったついでに!

何が悲しくてあの男のついでにされなければならないのか。
そんな高雄の気も知らず、いつもと同じように小さくノックの音がした。

「どうぞ」

間違って生徒だったりしたときの為に高雄は入室許可の言葉を変えることはない。
しかしこのたたき方は比叡だと確信していた。

「兄さん、ごくろうさんです。」

お茶にしましょ、と比叡が見せた袋は高雄が好きな和菓子店の手提げだった。

「ああ、せやな。」

高雄は、さっきまでの苦悩をなかったかのように笑顔で妹を迎え入れた。
結局のところ現金なもので妹がよりによって自分が一番苦手とする男の下へ足しげく通うものだからむかついていただけなのだ。
 
「右手の具合はどないや?」

「大分とよぉなって来ました。さっきも唐杉先生が包帯巻きなおしてくれはったんよ。ええ人やわ。」

ぎゅっ、と湯飲みをつかむ握力が強くなる。
割れることはないが軽くその手は震えていた。

「そ、そうか。そら、よかったなぁ。」

後ろを向いたままでよかった、と高雄は心底思った。
口はともかく、表情が決して笑顔ではないことくらい自分でもわかったから。
確かにやってることはいいことなのだ、これで文句でも言おうものなら、また比叡に怒られることは間違いないだろう。
 
「はい、あ!」

「どないした?」

袋を覗いたとたん、高く声を上げた比叡に高雄はあわてて振り返った。

「しもた、先生に本返すん忘れてた。」

「本・・・?」

比叡が取り出したのは英語の表題の難しそうな化学の本だった。
当然高雄が貸したものではない。最近比叡が先生と呼ぶのは唐杉一人だ。

「兄さん、うちちょっと先生のとこもっぺん行ってきます。」

「え?おい、ちょぉ!」

高雄が止めるまもなく比叡は本を片手に持つと研究室から飛び出していった。
あとに残されたのは比叡の持ってきたお茶菓子と高雄のみ。

「唐杉、絶対許さん!」

こればかりは比叡がなんと言おうとも、高雄は唐杉から比叡を引き離すことを心に決意した。

 
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