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同じように唐杉も、ここの所なんだか調子が悪い、と以前に比べてきれいになった部屋を見回しながら頭をかきむしった。

いつもここに来る小倉教授の妹は何かをせずにはいられないたちなのか、たまにきては少しずつ部屋を片付けていく。
彼女がこまめに換気もするようになった為か以前のようにタバコの煙が霧となって部屋の中にたまることもなくなった。
今のところ自分にとっての実害はないから放っておいたままなのだが実に変わった人材だ、とタバコの煙を思い切り吐き出しながら思う。

こういっては何だが唐杉は自分でもある程度のものはすべて持ちえた人間だと自覚していた。
研究者としていくつか賞もとったことがある、大学の教授としての地位もある、それに故郷には両親が残した遺産と今まで自分が溜め込んできた財産もある。

まあ、ないものがあるとすれば「豊かな人間性」というやつだろう。

短くなってきたタバコをもみ消し書かなければならないレポートでも纏めるか、と机に向かおうとしたとき。

本日二度目の軽快なノック音が聞こえた。

「開いてますよ。」

「失礼します。すんません唐杉先生。」

予想通り、部屋に入ってきたのは比叡だった。
唐杉はさっきまで考えていたことを隠すように来客用の笑顔を浮かべた。

「どうしました?何か忘れ物でも。」

「はい、先生にお借りした本をお返ししようと思てたんですけど、うち、すっかり忘れてまして。」

ああ、そういえばそんなこともあったか、と唐杉は比叡に差し出された本を受け取る。

「そうですか、別に今度でもよかったんですが。

「いえ、あんまり長くお借りするんも悪いですし。」

別にそんな気遣いは必要ないのに、ともおもったが唐杉は笑顔も崩すことはなく受け取った本を机の上へと置いた。

「わざわざありがとうございます。それより行かなくていいんですか?」

「え?」

「小倉教授のところですよ。途中で飛び出して私なんかのところへ来たらあの人怒ってるんじゃないですか?」

比叡はその言葉に青ざめることこそなかったものの引きつった笑みを浮かべていた。

「うちの兄が毎度毎度すんません。」

「いえいえ、別にかまいませんよ。それより早く行ってあげなさい。」

「はい、ほんなら先生。ありがとうございました。」

比叡は体よく追い出された、とはおもっていないだろう。
唐杉は扉の向こうに消えた彼女のことを瞬時に頭の外へ追い出すといすに腰掛け、本日何本目になるかわからないタバコに火をつけた。
廊下に出た比叡はそんな唐杉の心情など知るはずもなく、軽く首をかしげていた。

「先生…ご機嫌悪いみたいどしたなぁ。」

先ほどに比べると部屋の空気はぴりぴりと張り詰めているように感じた。
そういえば、ここの所理由もなく押し掛けていたような気がする。

「やっぱり、迷惑どしたんやろな。」

ふう、と息をつくと比叡はもたれていた部屋の扉から離れて歩き出す。

しばらく行くのは控えよう。高雄も正直なところいい顔をしていないのだから。
比叡は高雄の研究室に行くまでにぼんやりとここ数日のことを思い返していた。
自分がどんな表情を浮かべているのか、まったく考えもしないで。
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