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6.旦那・黒羽

昨日ベッドに入ったのが遅かったためか、いや・・・むしろベッドに入ったのは今朝だった。
とにかく、枕もとの時計を引き寄せて鼻が文字盤に付きそうなほどに顔を近づける。
ソレでも尚眼を細めて時間を読み取ろうとしているが、そんなことをするよりも眼鏡を掛けたほうが早いだろう。

「10時・・・ですか。」

寝起きでなくとも鋭い顔つきは、よりよくものを見ようと眉を潜めたために益々悪くなっている。
恐らく比叡と隣り合って歩けば誘拐犯に見られるかもしれない。
いや、実際過去に職務質問を受けたことがあるのだ。
元が美形なだけに仏頂面になると怖さが割り増しだ。
黒羽はようやく時計をヘッドボードに戻すと眼鏡をかけ、腰ほどまでに伸ばしている髪を縛った。

笑えるエピソードではあるが、この男が無精に髪を伸ばしているのも、まだ若かった頃に比叡に「短いのよりもにおてます」と言った一言が切欠だ。
ユージンも黒羽も単純といえば単純である。
この男の場合はソレがのろけにはや代わりするからたちが悪いのだが。

愛用の白衣をガウン代わりに手にとってはおると彼はそのままリビングへと足を向けた。
多分この時間なら比叡が洗濯物でも畳んでいるだろうと思っての行動だったが、リビングの扉を開いた彼は不在が多い長女と長男を見つけて唇の端を吊り上げた。

「おはよう、二人がいるとなんだか新鮮ですねぇ。」

「あら、パパ久しぶりね。」

朝の不機嫌はどこへ行ったのか、すっかり普段どおりのルシエルはパタパタとスリッパの音と共に黒羽の元へと駆け寄ると首に抱きついた。
小さい頃は足か腰だったのに、と感慨にふけると共に「年をとったなぁ」とつくづく実感させられる。

「・・・僕も、それをするべきですか・・・?」

年頃の男の子としてはやや恥ずかしいものがあるだろう。
何よりユージンはもう黒羽と同じくらい身長があるのだ、いやもしかすると追い越しているかもしれない。

「さぁねぇ、君の好きにしなさい。」

息子の戸惑いを見て黒羽はくすくすと笑って肩を揺らす。
結局姉の真似をしてユージンも抱きついては見たが、予想外に父親との顔の距離が近くてすぐに離れてしまった。

「おはようございます、比叡さん」

「おはようございます。なんかお腹に入れはります?」

「大丈夫ですよ、お昼までそう時間は空いていませんから。」

朝の挨拶と称して頬にキスを交わすのは恐らく近隣一体で我が家だけだろう、と娘息子は理解していた。
何せ学校に行ったばかりの頃に先生に友人におはようのキスをしてしまって大騒ぎになったのだから。
現在末っ子のトキとシギは長女のルシエルと13歳も離れている。
この分だと、いつか自分の子供といっても可笑しくはない妹か弟が出来ても不思議じゃないなと彼女はなんとなく思った。

「せや、黒羽はんお昼は何がよろしい?」

「そうですねえ・・・。久しぶりですし4人でどこかに行きましょうか」

「あら、ええねぇ。4人やなんて滅多に行けませんし。」

「次はユージンが酒を飲めるようになる頃でしょうね。」

いつまで経っても若い二人だと姉弟は揃って溜息を零す。
とりあえず、久方振りの4人での外食は決定したらしい、呼ばれるまでは夫婦水入らずでそっとしておいてやろうと、二人は何も言わずに頷きあうとそっとリビングを後にした。

それを知ってかしらずか、黒羽は比叡の隣に座るとなんでもないようなことを談笑しながら洗濯物を畳み始めるのだった。



Fin...

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4.長男・ユージン

ゴトンっと勢いよく後頭部から墜落してユージンはようやく目を覚ました。
どうすれば、そうまで見事に落ちることが出来るのか自分でも未だに理解できないと寝ぼけた頭で考えながら、ベッドに残されたままだった脚を下ろして立ち上がる。
時計を見れば8時過ぎ。

そういえば何故家にいるんだろう、と少し悩んでみた。
だが元来無表情の彼が少しばかり目を細めたところで、不機嫌なのか何なのか他人にはいまいちわかってもらえない。

因みにユージンは中学の頃から全寮制の学校に通っている。
そして今日は平日のはずだからユージンは寮の自室で目を覚ますはずなのだ。
首をかしげて首をかしげて・・・。

10分もした頃にようやく「そういえば、ナントカ記念日で帰省したんだった」と言うことを思い出した。
そのナントカ記念日の「ナントカ」の部分は思い出せそうにないがそれはいいだろう。
当のナントカ記念日は月曜日だから、月曜日までは自宅でのんびりと過ごせる。
もう一度布団にもぐりこもうかと少し悩んで、鼻をくすぐる朝食のにおいに誘われるようにして着替え始めた。

学校で何度か好みのタイプを聞かれて、その度に女生徒に逃げられる彼だが未だにその理由を自覚していない。
いわゆるトウヘンボクなユージンだから無理もないだろう。

「好きなタイプってどんな子ですか?」

と聞かれて、「母さんみたいに料理の上手な子」と答える彼なのだから・・・。
オマケに悪気はない。
悪気はない上に極度のマザコンでもないが、こんな返答を返されれば女生徒の脳内でのランク付けは
「1.母親 2.恋人」と言うことになってしまう。

結婚するわけでもないのに嫁姑関係を築きかねないユージンに告白する勇気を持つ女生徒は数少なかった。
だがユージンは深く考えてそんな答えを返したわけではない。
ただ単に好きなタイプはと聞かれれば「料理の上手な子」であって、好きな味付けはと聞かれれば「母さんの味付け」なだけなのだから・・・。

制服を着る必要もなく、ラフな格好に着替えると膝の後ほどまで伸びている髪をひとまとめにして階下へと降りて行った。
因みにこの髪型もファッションではない。
単に彼の友人が「髪が長いほうが似合っている」と言ったのと、ユージン自身髪を切りに行くのが面倒だったからだ。

また、彼の友人も本気で「似合う」といったわけではない。
いくら長髪が似合うからといって膝裏まで伸ばすのはあまりにも長すぎると言うものだ。
ただユージンが鬱陶しくなれば髪形も考えずに縛った髪の毛を鋏で「ジョキンッ」と切りかねないから告げた言葉だった。

そして当然の事だがユージンが階下へ降りる頃、3人の弟達は学校へといってしまっていた。



3.末っ子コンビ・シギ&トキ

隣にあるマリオンの部屋とは真逆で散らかり放題の部屋の中。
ベッドはなく変わりに天井からは2つのハンモックが吊るされていた。
もちろんネットではなく布製のハンモックだが、そもそも自分の寝台にハンモックを使う人がこの日本に一体何人いるだろうか。

隣の部屋から響いた目覚ましの音でやや目を覚ましていたらしい二人は、ソレでも眠気に勝てないままゆらゆらとハンモックで揺られている。
そうこうしているうちに部屋の隅にある二人の机に置かれたパソコンに自動で電源が入った。

『オハヨウゴザイマス マスター。 オ目覚メ ノ 時間デス。』

目覚まし代わりになっているらしいパソコンはひたすらその言葉を繰り返すが二人はむずがって起きようとはしない。
低血圧ではないが、小学3年生の癖に二人は夜更かしが響いているのだ。
床に散乱しているのは小学生のおもちゃらしからぬ、ペンチやボルト、プラスマイナスドライバーにネジやこんなものを本当に小学生が理解できているのかと思うほどの工具の山だ。

「ときぃ・・・アレ、うるさい」

「・・・シギがやったんでしょ・・・とめてよぅ」

もぞもぞと寝返りを打つと、これまた黒髪の夫婦から産まれたとは到底思えない鮮やかなシルバーのショートヘアーが揃って布団からはみ出た。
長女と長男までは、祖父からの隔世遺伝だが二人はもちろん違う。
これもマリオンが学校で苦労する原因の一つなのだが、二人は「面白いでしょ?」の一言で髪を何度も染めたり、カラーコンタクトを入れたりと、定期的に『模様替え』をしているのだ。

小学生の頃からそんなことをしていたら髪が痛むだろう・・・?

ソレがこの二人の凄いところ。
なにをどうやったのか、小学2年生の夏休みの自由研究で編み出したのは、髪を傷めないカラースプレーとブリーチ。
ぶっちゃけそんなものがあれば私がほしい。

と、そんな脱線した事は追いとくとしても、この二人は科学者の父親に似たのかかなりの勢いで「アリエナイ」物を沢山作り出している。
ソレもこれも小さい頃に、いや今もビデオで繰り返し見ている『ドラ○もん』のせいだろうか。
もちろん二人の同級生でも『ドラ○もん』を見ている生徒は多いが、二人に言わせれば『ドラ○もん』みたいに自在に走って動けるロボットを生み出せるなら天才以外にありえない、とのことらしい。
そしてその天才になりたいらしい二人は、こうして部屋中に機械工具を広げてドラ○もんのビデオを見ながらその道具を参考にいろいろなものを作っているらしい。

と・・・いい加減五月蝿くなってきたのか二人は同時にハンモックから降りるとパソコンを止め、動き回れる程度に部屋の中のガラクタ、もとい工具や材料を隅に固めた。

「あ、いい匂いがする。」

「ホントだ、今日はトーストかな?」

パジャマを脱ぎ捨てながら二人は色違いの服を着込んだ。
小さい頃はこうして服のデザインが被るとわざわざ違う服に着替えなおしていたものだが今となってはむしろ色違いのものを着たりしていないと落ち着かないもので、自然と同じデザインを手に取るようになってしまった。

「あ、あれだ・・・昨日のポテトサラダだ。残ってんだよまだ。」

「あと、前に買ってきたベーコンもそろそろ賞味期限切れるんじゃないかな」

二人は冗談のようにイニシャルの『T』と『S』が刺繍されたトレーナーを切ると軽快な足音を立てて部屋を飛び出していった。




2.次男・マリオン


朝の6時。
掛けていた目覚ましの音を聞いてマリオンはパチンッと目覚ましのボタンを叩く。
あまり長く掛けていると、つい先日帰ってきたばかりの姉が・・・まぁ、不機嫌になってしまうからだ。
そっと耳を済ませるが両隣の部屋の兄弟も、姉も起きていないらしい。

とりあえず右隣の部屋の兄はまず震度5の地震でも起きないだろう・・・。

今日の予定は、とダイアリーをひろげているマリオンは紛れもなく小学6年生。
けれど小学生とは言えど暇を持て余しているわけではない。
遊びにだって一生懸命な年頃なのだ。

「今日は・・・何にもなしか。」

マリオンの通う小学校は「生徒の自主性を尊重するため」だとかどーたらこーたらで、月々のイベントやそのほかの学校行事、その他の雑用一切合切を生徒に任せてしまっているのだ。
そしてマリオンは生徒会長・・・忙しくなるのは当たり前。

オマケに何故だか出会って5分で友達?みたいな雰囲気を作るのが上手いせいか、その上運動神経もそこそこのためか、色んなクラブから「試合があるから助っ人に来い」・「メンバー足りないからよろしく!」と日々引っ張り蛸な人生。
(そして少年は学生生活がなくなるまで、ずっとこんな生活なのだということをまだ知らない)

まぁ、そんな現状を楽しめるマリオンでなかったらまず誰もそんな頼みごとをしないだろう。


桃色のカッターシャツにベージュのセーターを合わせて、ギリギリ短パンといえるようなズボンを穿く。
元々姉のものだったその服は、姉が着古し、兄が着古し、自分に回ってきたお下がり。
けれど物を乱雑に扱わない二人だからか、それらはまるでつい最近買ったもののように綺麗なままだ。

そして、やっぱり元は姉の持ちものだった等身大の鏡の前に立って身だしなみをチェックする。
断っておくがマリオンはナルシストではない。
鏡の中の自分を見て溜息を零すような危ない子供ではない。

長年の経験で、自分の夢を語ると他人に笑われると学んだ彼はいまやその夢を口にすることはないが、目指しているのは「白馬に乗った王子様」という、なんともメルヘン(げふんっ、ごふんっ)いやはや、高すぎる崖の上にある花を摘むような夢を目指している。
むしろエベレストの頂上といったほうがいいだろうか。

マリオンの中の理想の王子様像と言うのは何事においても完璧で、もちろん身だしなみを初めとする外見も、スポーツも、勉強も、何でもござれという「こんな奴本当にいるのかよ、と問い返したくなるような人間だ。

本人は癪に思っているが、かなり・・・いや反りがまったく合わない父に似たために外見はまず問題ないとわかっている。
多分こんな事をいったら全国の男子諸君に殺されるだろうけれど・・・。
そして物分りのよさも、たいていの子どもが嫌う理科や算数といった勉強もそつなく要領よくこなせるのは恐らく父親に似たからだと言うのを本人は一番よく知っていた。
多分父も、若い頃はかなりもてたのだろう。
生憎スポーツは万能ではないようだが・・・。
だがマリオンの目指す王子様と決定的に違うのはあの「性格」だ。

ああはなるまい、とマリオンは心のうちに決心を固める。

「っと、そろそろ下に降りなきゃ。」

目に映った机の上の時計が指し示す針は6時45分。
やや自問自答の時間が長かったようで、マリオンはカバンをつかむとリズムよく階段を駆け下りていった。





1.奥方・比叡


明け方の4時過ぎ。
どうやって時間を判断しているのか、一家の台所を支える比叡はひっそりと起き出した。
同じ寝台で寝ている夫の顔を覗き込めば、自分しか知らない普段よりも幼げな寝顔で平和そうに寝息を立てている。

寝室から襖で続いている隣の自室に音もなく滑り込むとそっと襖を閉じた。
寝巻きに使っている浴衣は昨日出したばかりのものだから、と衣紋掛けにかかっている藤色の着物を降ろして変わりに掛けた。
着物を着る人なんてほとんど居ないこのご時勢。
いたとしてもファッション程度で、帯も正直言ってきちんと自分で結べる人がどれほどいるだろうか。

しかし彼女は手馴れた手つきで長襦袢、着物、帯を着付けていった。
最後に帯締めを絞めて鏡台の前に立つと確認するように一周する。
少しばかり納得がいかなかったのか帯びの形を整えなおすと、今度こそ満足したように小さく頷いて鏡台の前に座り櫛を手に取る。
背中の中ほどまでに伸びている黒髪は毎日きちんと結われているせいかやや癖がついていた。

何時ものように簪と櫛を手に取り手早く纏め上げると重苦しい髪はさっぱりと結い上げられている。
ただし、右頬から右目だけは伸ばされた前髪で覆われたまま。

わざわざ上げて見せる顔でもないからと、彼女は前髪をやや垂らしたまま鏡台の前を離れると台所へと足を向けた。

今日の朝食はなんにしようか、と頭の中に思い浮かべる。
理想としてはご飯にお味噌汁、焼き魚に卵焼きと純和風の朝ご飯。

けれど、今日は珍しく昨日の残り物のポテトサラダがある。
和食とポテトサラダも悪くないけれど、やはりここはトーストとベーコンエッグ、それにスープのほうがいいかしら、なんて思い浮かべながらリビングに明かりを灯すのだった。




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