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男が校内に消えるとほぼ同時に高雄がさっきまで男が座っていたあたりに駆け寄ってくる。

「比叡!」

「あ、兄さん。はい、これやろ?いうてた書類。」

比叡は忘れる前に、と書類を差し出した。だが高雄は書類に見向きもせずがしっと比叡の肩をつかんでものすごい剣幕の顔を近づける。

「比叡!あの男に何もされへんかったか!」

「は?な、なんやの?」

がくがくと肩をゆすられ、比叡は目を白黒させる。一体さっきの男がなんだったのか。
忘れられないほどの印象はあるけれど、比叡は男の名前すら知らない。

「なんもなかったんかっ?」

「あ、あるわけあらへんよ。だ、大体さっき会うたとこやで?兄さんちょっと落ちついてんか。」

肩を揺すぶる高雄の手を押さえて無理やり下ろさせる。

「わ、悪い。堪忍な、兄ちゃん頭に血が上ってしもて。」

この様子だと、本当に写真を見ただけで他の男性教授に怒鳴っているかもしれない、と比叡は軽く頭を抱えた。
見られたくないなら写真を大学へ持ってこなければいいのに、といっても仕方がないことくらい長い付き合いで分かっている。

「兄さん、さっきの人のことしってるのん?」

そう尋ねたとたん、申し訳なさそうだった表情はあっという間に苦虫を噛み潰したのかと思うくらい渋い表情にはや代わりした。

「しっとるもなにも、学内の有名教授、唐杉黒羽や。」

「ほな、偉い人なん?」

すごい人と話したんやなぁと比叡は一人で感心しそうになったが、兄の浮かばない表情に眉を寄せる。

「確かに、若くして博士号を取った化学者なんやけど、どうにもこうにも変わり者の奇人や。講義以外では奴の研究室に近寄ろうとする生徒すら居らん。」

渋い表情の高雄の言葉に比叡は納得した。確かにあれでは近づきたがる生徒も少ないだろう。

「顔はええんにもったいない人やなあ。」

なんとなしにそう呟くと、再び高雄の表情が変わった。

今度はこの世の終わりを見たかのような絶望だ。

何かまずいことでも言ったか?と比叡は少し身を引く。
しかし体を離す間も許されず、また肩をつかまれて揺さぶられた。

「ひ、比叡!あないなろくでなしが好みなんか?そうなんかっ?俺は絶対許さへんで!大体お前には松原さんとこの坊ちゃんが居るやろうが!」

ちなみにこの松原の坊ちゃんというのが比叡の許婚。
けれど一度もあったこともないのに、と比叡は止められない高雄の暴走に軽く意識をそらしながら男、唐杉が入っていった校舎のほうを見つめていた。

「わかっとりますえ。ちょっと変わった人やと思っただけやから。」

比叡は無理やり写真で見たきりうろ覚えの「松原の坊ちゃん」の顔を思い浮かべながら校舎から明るい空へと視線を移した。

太陽の色が目に染みる。

きっとあの人が気になるのは自分や兄のできない自由な生き方をするからなのだと小声で口の中でつぶやく。

「兄さん、うちおなかすきましたわ。」

「え?ああもうこないな時間か。ほな学食で食べてくか?結構旨いで。」

「うん」

高雄は奇人から妹の興味がそれたことに機嫌をよくして比叡を立たせると自分の気に入りの食堂へと連れて行く。
比叡はその間も無意識に小さく呟いていた。


「自分と違うから、少し気になっただけ」、と・・・

 

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